
260年続いた徳川幕府は、1853年の黒船来航により状況が一変します。
外国の脅威を前に、国内は開国派と尊王攘夷派に二分されます。両派の争いで、国は大混乱に陥ります。
そして、1867年の大政奉還を受けて、明治政府が樹立されます。日本は、近代国家への道を歩み出すことになったのでした。
幕末から明治初期は、動乱期であるために理解するのが難しい時代です。
そこで、幕末から明治初期までを扱った映画を集めてみました。古い作品から最近の映画まで、幅広く選んでいます。
- 『人斬り』(1969年) ⇦ 最恐の剣士・岡田以蔵の半生
- 『福沢諭吉』(1991年) ⇦ 幕末から明治維新後をかけぬけた偉人
- 『壬生義士伝』(2002年) ⇦ 新撰組の生き残りの悲話
- 『長州ファイブ』(2006年) ⇦ 維新後に活躍する若者たち
- 『桜田門外ノ変』(2010年) ⇦ 江戸幕府の大老が暗殺された事件
- 『天外者(てんがらもん)』(2020年) ⇦ 実業家・五代友厚の半生
- 『十一人の賊軍』(2024年) ⇦ 新発田藩の寝返りを大胆な“集団時代劇”へ昇華!
- まとめ
目次
『人斬り』(1969年) ⇦ 最恐の剣士・岡田以蔵の半生

- 監督:五社 英雄(ごしゃ ひでお)
- 上映時間:140分
- 出演:勝新太郎、仲代達矢、三島由紀夫
- レビュー評価:★★★★☆ 3.8/5
幕末の土佐に生まれた岡田 以蔵(勝新太郎)は、酒と女に目がない荒くれ者。
以蔵の豪快な剣さばきは、人々に恐れられていました。そんな彼に目をつけたのが、土佐勤皇党(とさ きんのうとう)の党首・武市 半平太(仲代達也)です。以蔵は武市の“犬”として、保守派の武士たちを次々と血祭りにあげてゆきますが・・・
『鬼龍院花子の生涯』の五社英雄 監督がメガホンをとった、痛快娯楽作。
冷酷な人斬りとして知られる岡田以蔵ですが、本作ではそのイメージとは大きく異なります。パワフルで、エネルギッシュ。どこまでも無邪気に武市に従う姿には、かわいげさえ感じます。
大河ドラマ『龍馬伝』で佐藤健が演じた岡田以蔵とは、180度違うキャラクター。名優・勝新太郎の当たり役です。
『福沢諭吉』(1991年) ⇦ 幕末から明治維新後をかけぬけた偉人
- 監督:澤井信一郎
- 上映時間:123分
- 出演:柴田恭兵、榎木孝明、仲村トオル、南野陽子
- レビュー評価:★★★★☆ 3.1/5
福沢諭吉といえば、『学問のすゝめ』と1万円札。慶應義塾の創設者としても知られています。功績が多岐に渡るため、人物像をつかみにくい人も多いはず。
江戸時代、外国語といえばオランダ語でした。特に、医学の分野でオランダ語は重宝されていたからです。
諭吉(柴田恭兵)もオランダ語をマスターしますが、横浜にある外国人居留地に足を運んでがく然とします。外国人たちが話していたのは、英語だったのです。
「これからは英語が世界の共通語になる!」
直感した諭吉は1860年に咸臨丸(かんりんまる)に乗り、アメリカへ渡ります。向こうの文化と英語を学んだ諭吉は、日本に戻ると塾を開いて後進の指導にあたります。
慶応義塾ができるまでに主眼がおかれているため、福沢諭吉の伝記映画としては中途半端。恋愛要素も微妙で、映画としてはつまらないかもしれません。
ただ、福沢諭吉は明治維新を政策ブレーンの立場で迎える人物。西郷隆盛ら、政権の外にいた人間から見るのとはまた違った「明治初期」が浮かび上がってきます。
『壬生義士伝』(2002年) ⇦ 新撰組の生き残りの悲話
- 監督:滝田洋二郎
- 上映時間:137分
- 出演:中井貴一、三宅裕司、村田雄浩、夏川結衣、中谷美紀
- レビュー評価:★★★★☆ 3.8/5
南部藩の下級武士の貫太郎(中井貴一)は、美しい妻とかわいい娘を授かります。
しかし、足軽の身分のため生活に困窮します。このままでは妻子を食わせることができません。そこで脱藩し、世間を騒がせていた新撰組に入隊します。貫太郎は剣の達人でしたが、命を惜しみ、お金をためこむことに執着します。
浅田次郎の同名小説を映画化。新撰組の隊士・吉村貫太郎の主人公に、幕末を生き抜いた武士の姿を描いています。隊員からは“守銭奴”(=どケチ)とからかわれますが、家族のために必死でお金を稼ごうとする姿に、胸を打たれます。
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『長州ファイブ』(2006年) ⇦ 維新後に活躍する若者たち
- 監督:五十嵐 匠
- 上映時間:119分
- 出演:松田龍平、山下徹大、北村有起哉
- レビュー評価:★★★★☆ 3.5/5
幕末に長州藩からにヨーロッパに派遣されて極秘留学をはたした5人の若者がいます。伊藤俊輔(のちの伊藤博文)・井上聞多(のちの井上馨)・遠藤謹助・山尾庸三・野村弥吉(のちの井上勝)たち5人です。彼らは、長州五傑(=長州ファイブ)と呼ばれています。
当時の長州藩は、「尊王攘夷」(=天皇を尊び、外国勢力を追い払おうとする思想)の立場。
その藩の人間が禁制を犯してまで外国に渡航しようという訳ですから、まさに命がけ。彼ら5人が西欧で学んできた技術・知識は、近代国家設立に大きく貢献することになります。
幕末の志士たちが西欧の産業を学んだ原動力とは、何だったのか? 教科書でも学べない近現代史が見えてきます。
『桜田門外ノ変』(2010年) ⇦ 江戸幕府の大老が暗殺された事件

- 監督:佐藤純彌
- 上映時間:137分
- 出演:大沢たかお、長谷川京子、伊武雅刀、北大路欣也
- レビュー評価:★★★★☆ 3.1/5
幕末に江戸幕府の大老・井伊直弼が暗殺された『桜田門外の変』。事件のきっかけは、尊王攘夷派の反対論が渦巻く中、井伊がアメリカとの修好通商条約に踏み切ったことがでした。
危機感を抱いた水戸藩から脱藩した17名と薩摩藩士1名の18名は、井伊の襲撃を決行します。
映画『桜田門外ノ変』は襲撃の実行犯の立場から、襲撃前後の様子をこと細かに描いています。まるでドキュメンタリーのようなリアルな演出によって、江戸幕府が崩壊してゆくさまを追体験できますよ。
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『天外者(てんがらもん)』(2020年) ⇦ 実業家・五代友厚の半生

天外者
- 監督:田中光敏
- 上映時間:109分
- 出演:三浦春馬、三浦翔平、西川貴教、森永悠希、森川葵
- レビュー評価:★★★★☆ 3.8/5
幕末の長崎。
薩摩藩士の青年・五代才助(後の五代友厚)は、海軍伝習所で学びます。五代は、すさまじい才能の持ち主・“天外者”(てんがらもん)と呼ばれ、将来を期待される若者でした。やがて五代は、坂本龍馬、岩崎弥太郎など、日本の未来へ目を向けた若者たちと交流するようになります。
そんな中、遊女のはると出会った五代は、理想と現実のはざまに揺れて・・・
正直、登場人物に対する説明が少なすぎて、歴史を知らない人にはストーリーを把握しづらいです。ただ、本作が遺作となった三浦春馬さんの演技は、やはり素晴らしい。他人を否定しない五代の人柄が伝わってきます。
『十一人の賊軍』(2024年) ⇦ 新発田藩の寝返りを大胆な“集団時代劇”へ昇華!
- 監督:白石 和彌(しらいし かずや)
- 上映時間:155分
- 出演:山田孝之、仲野太賀、尾上右近、鞘師里保、千原せいじ
- レビュー評価:★★★★☆ 3.9/5
新発田藩の家老、溝口内匠はゆきづまっていました。戊辰戦争が激しさを増すなか、新発田藩は新政府軍への寝返りを画策しますが、旧幕府派の奥羽越列藩同盟軍が出兵を求めて押しかけてきたのです。
(まだ寝返りの連絡を受けていない)新政府軍と鉢合わせてしまったら、戦いは避けられません。
溝口内匠は押しかけてきた旧幕府軍を止めるため、「砦の護衛作戦」を思いつきます。
集められたのは、殺人、賭博、姦通など重罪を犯した、10人の罪人たち。彼らは、旧幕府軍を場外へ追い出すあいだだけ足止めを命じられますが・・・
ヤクザの代理戦争を描いた名作『仁義なき戦い』を、時代劇で再現したような意欲作。罪人たちに感情移入できないのはマイナスですが、エンタメに振り切った時代劇を見たいかたにはおすすめです。
まとめ
幕末・明治初期を扱った映画を調べると、移り行く時代に翻弄される武士を描いた作品が多いことがわかります。維新期の政治の混乱を描くような作品は、意外とないのです。
滅亡間近の江戸幕府の混乱や、新しくできたばかりの明治政府の内情がわかるような映画をぜひ作ってほしいものです。